「○○ちゃん」と呼ぶと、ぴくっと耳が動く。でも、来てはくれない。
猫と暮らしていると、こんな場面が毎日のようにありますよね。「この子、自分の名前をわかっているのかな?」と気になっている飼い主さんは、とても多いです。
結論からお伝えすると、猫は自分の名前を「ほかの言葉とは違う特別な音」として聞き分けています。研究でも確かめられていること。
ただ、わかっていても返事をしないのが猫らしさ。この記事では、猫が名前を覚えるしくみと、愛猫に伝わりやすい呼び方のコツをやさしくお伝えします。
結論:猫は名前を覚えている。でも「返事をする」とは限らない
まず、いちばん知りたいところからお答えします。猫は自分の名前を聞き分けていますが、それが行動に出るかどうかは別の話です。
- 猫は自分の名前を、長さや響きの似た一般的な言葉と区別している
- 同居している猫の名前とも、区別できることが確かめられている
- 飼い主の声と、知らない人の声も聞き分けている
- ただし「呼ばれたら飛んでくる」反応は、犬ほど強くない
「わかっている」と「応えてくれる」は別もの
猫が名前に反応するとき、まず動くのは耳と頭。くるりと耳だけこちらに向けて、体はそのまま——あの仕草です。
これは猫にとって、ちゃんとした返事。鳴いたり駆け寄ったりしないのは、無視しているからではありません。
猫にとっては「聞こえたよ」「でも今は急ぐ用じゃなさそう」までを、耳の動きひとつで伝えているわけです。
猫が名前を聞き分けられる理由
ここからは「本当に聞き分けているの?」という疑問に、研究でわかっていることから答えていきます。
研究で確かめられていること
上智大学の研究チームは2019年、科学誌『Scientific Reports』に猫の名前の認識についての研究を発表しました。
実験では、猫に4つの言葉を順番に聞かせたあと、①名前と長さ・アクセントをそろえた一般名詞 ②同居猫の名前 ③自分の名前 を聞かせます。
繰り返し聞くうちに小さくなっていった反応が、自分の名前のときだけ大きく戻る。しかも、飼い主ではない知らない人が読み上げても、同じ結果でした。
いっぽうで、猫カフェの猫では、自分の名前と同居猫の名前の区別がはっきりしなかったとのこと。たくさんの猫と暮らす環境では、名前が「自分だけの合図」になりにくいのかもしれません。
さらに東京大学の研究グループは2013年、20匹の猫のうち15匹が、飼い主の呼び声と他人の呼び声を区別していたと報告しています。このときも反応は耳や頭を動かす程度で、鳴いたり尾を振ったりする応答はほとんど見られませんでした。
名前は「いいことが起きる合図」として覚えられる
猫は言葉の意味を、辞書のように理解しているわけではありません。
「この音のあとには、ごはんが出てくる」「なでてもらえる」。そうした経験が積み重なって、名前が特別な音になっていきます。
逆にいえば、名前のあとにうれしくないことが続けば、名前そのものが「よくない合図」になってしまう。ここが、あとで紹介する呼び方のコツにつながります。
犬のように来ないのは、猫の生き方の違い
犬は人と一緒に働いてきた歴史が長く、呼ばれて動くことが仕事の一部でした。
猫は単独で狩りをする動物。だれかの指示で動く必要がなかったぶん、「呼ばれたから行く」という行動が育ちにくいと考えられています。
来てくれないのは、しつけが足りないからではありません。
愛猫に名前が伝わりやすくなる5つのコツ
ここからは今日から試せることです。難しいことは、ひとつもありません。
① 名前は短く、語尾をはっきりと
猫が聞き取りやすいのは、2〜3音ほどの短い呼び名。「モモ」「きなこ」「レオ」のような長さです。
長い名前でも大丈夫。ふだんは短い愛称にして、語尾をはっきり発音してみてください。
② 呼んだあとに「いいこと」をセットにする
名前を呼ぶ → おやつ、なでなで、遊びに誘う。この順番を何度も繰り返します。
来てくれなくても、こちらを見てくれたらそれで十分。「気づいてくれてありがとう」の気持ちでかまいません。
③ 家族で呼び方をひとつに決める
「モモ」「モモちゃん」「モモ太郎」と人によって違うと、合図がぼやけてしまいます。
呼びかけるときの言い方を家族で揃えておくと、ぐっと伝わりやすくなります。
④ 叱るときには名前を使わない
いたずらを止めたいときに名前を連呼すると、名前が「怒られる合図」になってしまいます。
止めたいときは、名前ではなく「あっ」など短い音で。そのあとに、してもいい場所や遊びへ誘ってあげてください。
⑤ 少し高めの声で、ゆっくりやさしく
猫は人よりも高い音域まで聞き取れるといわれています。低く強い声よりも、少し高めのやわらかい声のほうが届きやすい傾向。
名前を呼ぶときだけ声のトーンを変えておくと、猫にとっての目印になります。
| 伝わりやすい呼び方 | 避けたい呼び方 |
|---|---|
| 短い愛称をひとつに決める | 人によって呼び名がバラバラ |
| 呼んだあとにいいことがある | 呼ぶのは爪切り・通院のときだけ |
| 少し高めのやさしい声 | 低く大きな声で強く呼ぶ |
| 反応がなければ一度やめる | 反応するまで何度も連呼する |
名前を呼んでも反応がないときに考えたいこと
ほとんどは「今はその気分じゃなかった」で済む話です。ただ、少し気をつけたい場合もあります。
眠っている・集中しているときは届かない
猫は1日の多くを寝て過ごします。うとうとしているとき、窓の外を熱心に見つめているときは、そもそも耳がこちらに向いていません。
反応のない日が続いても、遊ぶときや食事のときに名前でこちらを見るなら、まず心配はいりません。
聞こえの変化が隠れていることも
年齢を重ねると、人と同じように聞こえが変わってくる子もいます。白い毛・青い目の猫では、生まれつき聞こえにくい場合があることも知られています。
次のような様子があるときは、一度かかりつけの獣医師に相談してみてください。
- 以前は反応していたのに、急に呼んでも気づかなくなった
- 後ろから近づくと、毎回ひどく驚く
- 鳴き声が以前より大きくなった
- 耳をかく・頭をふる、耳からいつもと違うにおいがする
耳の中の汚れや炎症が原因のこともあります。気づけたことが、いちばん大事な一歩。
よくある質問
名前について、飼い主さんからよく聞かれることをまとめました。
Q. 猫の名前を途中で変えても覚えてくれる?
覚えてくれます。新しい名前を呼んだあとに、おやつやなでなでを繰り返すのがコツ。
保護猫を迎えたときなどは、しばらく前の呼び名と新しい名前を両方使い、だんだん新しいほうへ寄せていく方法もあります。
Q. 成猫や保護猫でも名前を覚えられる?
年齢は大きな問題になりません。名前と「いいこと」が結びつけば、何歳からでも覚えていきます。
迎えたばかりで隠れている時期は、無理に呼ばず、そっと名前を添えて話しかける程度から始めてみてください。
Q. 愛称がたくさんあると混乱する?
混乱して名前がわからなくなる、ということはありません。ただ、反応してほしい合図はひとつに決めておくほうが伝わりやすいです。
ふだんは好きな愛称で呼び、ごはんや帰宅のときだけ正式な名前で呼ぶ——そんな使い分けでも大丈夫。
まとめ
猫が名前を覚えるのかどうか、大切なポイントを3つに絞ります。
- 猫は自分の名前を、ほかの言葉や同居猫の名前と聞き分けている
- 耳や頭をこちらに向けるのが猫なりの返事。来ないのは無視ではない
- 名前のあとに「いいこと」を重ねると、呼びかけが届きやすくなる
振り向いてくれなくても、耳はちゃんとこちらを向いている。そう思うと、名前を呼ぶ時間がもっと楽しくなります。
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⚠️ 免責事項
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。掲載情報は執筆時点のものであり、個々の状況によって異なります。気になる症状がある場合は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。